もう長い付き合いだというのに、思い返せばふたりは互いの目をまともに見た記憶がない。人と話すときに、相手の顔を見れないタイプゆえにだろうか。それとも、そもそも他人に興味がないのだろうか。スマホをいじっていた手が止まる。「あのさ」、同じ第一声にかち合う視線。隣り合うだけでは分からなかった、向かい合っているからこそ知る、相手の表情。
ほんのりと色付いた顔を伏せて、どちらともなく笑みがこぼれ出る。再び目を合わせれば、これからはきっと、瞳に映るその光景が一等愛おしいものになる筈だ。
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向かい合わせ
8/26/2023, 3:25:32 AM