ガチャン、と音を立ててチープな器具は役目を終えた。彼女の薄い耳朶を貫いたそれを外してみれば、白い肌を飾るように小さな石が光っている。予想通り、深海のような青が良く似合う。
心から嬉しそうにお礼を言った彼女は思いもしないだろう。友人だという男に傷をつけられて帰ってきた彼女を見たときの、恋人の燃え上がるような嫉妬など。彼女は溢れんばかりの笑顔で俺がつけた傷を自慢し、さらには俺が選んだピアスを外すことなく、定着するまでずっとその傷を気にするだろう。ピアスを付け替えるたび、耳を見るたびに俺を思い出すかもしれない。
届かぬ想い、なんて馬鹿げた言葉で終わらせるわけがない。ずっとずっと残るキスマークをつけたのは俺の方だよ。ざまぁみろ。精々俺が彼女と結ばれるまで、屈辱に耐え続ければいい。
4/15/2023, 1:29:40 PM