麦わら帽子
立ち竦む自分の周りにあるのは、呆れるほどに青い空と、蠢く白い雲。笑う草木。
夏なんて嫌いだ。
暑いだけで、何も良いことなんかないじゃないか。
「どうしたの?」
そう言って覗き込んでくる君の麦わら帽子が日影をつくる。
「夏は嫌いだ…」
顔を歪めてそう呟けば、君はくすくすと笑う。
なにがおかしい?
更に不機嫌に歪んだ私の眉間を君はこづくんだ。いつも。
「でも私は君と会える夏が好きだよ?」
太陽を背にしているから、君の表情はわからない。
けれど、その麦わら帽子は毎年変わらずに、そう言っていたね。
8/12/2023, 4:33:22 AM