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冬が好きだ。
つんと張り詰める冬の空気が好きだ。吐く息の白さは、私たちが普段意識していない「呼吸」を思い出させてくれる。
悴む手指の冷たさ。肌を刺すようなからっ風。裸になって、淡灰色の空に両手を伸ばす街路樹たち。
時が静止したかのような冬の静けさは、死に近いからこそ克明に生命の輪郭を明らかにする。
低い空と同じ色をした厚い雲の狭間から、黄金色の日差しが差し込む。雲が蛋白石の光を纏う。プリズム。
この景色に、あと何度出会えるだろう。

1/5/2026, 3:33:20 PM