透明
恋人に会えないのが寂しくて。
その心の隙間を埋めるように、
貴方を求めました。
こんな私を、貴方は温めてくれました。
貴方が私の恋人だったらいいのに、と、
そんな自分勝手な事を思って、
藻掻く様に、貴方に手を伸ばしました。
そんな私の怯えて震える手を、
貴方は、優しく握って下さいました。
余りに不道徳な、二人の時間。
密やかな口付けの間を、
『愛している』という言葉が、
零れて、落ちていきました。
貴方の心の中に、私ではない、
別の誰かがいるのは、分かってました。
だけど、私は。
何も気付かない振りをして、
幻影の恋に溺れるのです。
このまま貴方と、
透明になってしまいたい。
私の恋人も、貴方の想い人もいない世界で、
貴方と二人、透明に溶け合ってしまえば、
私はもう、こんなにも泣かないで、
いいのでしょうから。
5/21/2024, 5:52:02 PM