サチョッチ

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 カーテンのかかった巨大な鳥かご。いつもの部屋。気持ちでは長く過ごしているが、ここに来てからどれくらい経つだろう。柔らかな絹の外は無骨な鉄柵で囲われているが、私はこの場所が嫌いではない。全身を優しく受け止めるマットレス素材の床に、周りには私好みの可愛らしいクッションやぬいぐるみが飾られている。光源は火傷をしない不思議な青い炎。頭上の遥か上にランプのように吊るされて燃えている。厳かな南京錠のついた出入り口は、私を連れ込んだ彼にしか開けられない。
 彼は私の心を繋ぎ止めるため、定期的に鳥かごを訪ねては、あの手この手で尽くしてくれる。珍しい骨董品や装飾、服なんかも贈ってくれたり、心地よい香りを焚きながら触れ合ったり、身も心も自分のものであるという証として、裸体に筆で模様を描かれたりもした。彼がいつも言って聞かせていた通り、私は彼から与えられる全てを「愛」として受け取った。そもそも鳥かごに住まわせるのも、私の存在を常にそばで感じていたいからだ。初めて出会ったときから「特別」であると感じた私を離したくないのだ。年中鳥かごの中に封じられてこそいるが、彼が私を傷つけようとしたことは一度もなかった。今ではぼんやりとしてしまった昔の生活に比べ、こちらの方がなんとなく過ごしやすいように思えた。

カーテンがふわりと揺れ、陰から彼が現れる。心から私を愛しい目で見下ろし、そっと音もなく身を寄せる。
「僕と君だけの世界だから。」
柔らかな声とともに、私は胸の内がくすぐったくなるのを感じた。
 これから先も、きっと私は彼の鳥かごの中で守られ続けているだろう。
ここなら、何も出来ない私を責める人はいないから。

7/25/2023, 3:10:18 PM