とわ

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春爛漫


「私、桜が咲く季節って嫌い。希望ばっかり描かれて、でも実際は花粉と黄砂で空気きったないし。桜すぐ散るし。」
桜を見上げもせず、花びらが散る道を雑に歩いて彼女は言った。驚いて数回瞬く。その言葉は僕の胸に清く吹き抜けた。
あぁ、春という季節への違和感は、それだったのか。
「…確かに、本当そうだ。」
「え?あ、ふうん。捻くれてるとか言わないの。」
「言わないよ。僕には捻くれられるほどの自我もないのかもしれない。」
「そう?そんなこと言えるくらいなんだから、十分じゃん。」
風が吹き上げて、桜の花びらが踊った。彼女が鬱陶しそうに乱れる髪を押さえて、僕はその横顔に見惚れた。

4/10/2024, 11:37:18 AM