きょうだい。だけど全然違う僕と兄。
何をしても、どれだけ頑張っても。
いつだってぼくの上には兄がいた。
いい所を全部もっていったようだと、誰かが言った。
一度でいい、一番になりたい。
ありとあらゆる事で挑んだ。今だから自分の敵は自分自身だと思えるけれど。
ドライアイスのように、もやもやと。
劣等感が全身を包んで、結果を受け入れる度に足先から抜けていく熱意が冷えていった。
いちばんにはなれない。
幼い僕はそれを受け入れ、違う道を歩いた。
そんな事を思い出しながら、ふと大人になった今、呼吸するように尋ねた。なぜいつも、勝てなかったのか。
真面目な兄がそっと、子供のように笑う。
兄としての意地だよ。と
その声は今まででいちばん、優しかった。
「裏返し」
8/22/2023, 7:16:03 PM