指でなぞった痕跡が残るくらい、つるんとした毛皮。
フワッフワの雲を贅沢に閉じ込めたようなボディ。
首の座っていない赤子のような頭には、虹を描いたような半円の耳がピョコンと立っている。そして、澄んだ紅茶のような瞳。
彼女は溺れてしまうくらい惚れ込んで、どこに行くにも僕を側に置いた。
晴れた日はお天道様から日の匂いを。
仕事用の鞄の中では、ふわりと優しいお米の甘い匂いを。
眠気覚ましに飲んでいたコーヒーを被った時も。
同じ布団に潜れば、石鹸と化粧水の香りが共有された。
そして、今日は君の瞳から流れたしょっぱいお塩を擦り付けられた。
自慢のボディは抵抗力をなくし、肩を貸していた箇所がペシャンと潰れてしまった。
君と出会ってから、沢山の香水を身に纏ってきた。
僕はその香水から“人生の味”を教えてもらっている。
今日はゆっくりお休み。
そしてまた明日、一緒に人生を味わおうじゃないか。
『君と出会って、』おしまい
5/5/2026, 1:54:36 PM