特盛りごはん

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 就寝前。歯ブラシを片手にボロいアパートの窓をそっと開けた。真夜中とも言える今の時間、駅チカとは程遠い住宅地に人の気配はない。
 三階建てのアパートの最上階からは建ち並ぶ一軒家の奥にぼんやりと繁華街の明かりが見える。色々な色が集まっているそれは遠くから見れば大きな一つの光の塊で。真っ暗な住宅地の平原にぽつりとある灯火のように、眠らぬ街は今日も煌々と光を放っていた。
 今あの場所では人々の声で溢れている筈なのに、こちらには声ひとつ届かない。そんな静寂の中で遠くの喧騒に思いを馳せるこの時間が好きだ。
 カシュ、と惰性的に歯ブラシを動かす。明日の予定をぼんやり脳内で確認していると、遠くの方で帰宅途中の酔っぱらいらしき意味のない笑い声が聞こえた。
 不快なそれを遮るように窓を閉めて、次いでゆっくりとカーテンも閉める。布に覆い隠されて視界から消えるその瞬間も、遠くの街は変わらず光を放っていた。



/街の明かり

7/8/2023, 2:38:41 PM