星乃 砂

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《巡り逢うその先に》
        第2章 ③

登場人物

 桜井華   (さくらいはな)
 高峰桔梗(たかみねききょう) 
   樹      (いつき)
 葛城晴美 (かつらぎはるみ)
 犬塚刑事    (いぬづか)
 足立       (あだち)
 黒鉄銀次 (くろがねぎんじ)


高峰桔梗は警察学校に入校し、初めての寮生活を過ごしていた。
同室のパートナーは、ふたつ年下で高卒の葛城晴美という活発な子だ。
1ヶ月も経つと晴美は桔梗に打ち解けていた。
「葛城さんはひとり暮らしで寂しくないの?」
「私の実家はど田舎で農家なんですけど、周りには田んぼと畑しかないんですよ。コンビニだって自転車で20分もかかるんですよ。おまけに休みの日は畑の手伝いさせられるし、脱出できてよかったですよ」
「友達とも離れちゃったんでしょ?」
「それが、仲のいい友達はみんなこっちの大学や会社に就職したから、またに会ってるんです」
「そうなんだ。それなら寂しくないね」
「高峰さんはどうして警察官になろうと思ったんですか?」
「実は数年前から婦警さんの家に居候してて、その人に勧められたのが一番の決め手かな」
「その人にいろいろ教えてもらっているんですか?」
「まあね」
「今度の休みにお邪魔してもいいですか、私も教えてもらいたいです、お願いします」
「うん、大丈夫だと思うよ」
そして、次の休みに葛城晴美を連れて自宅へ戻った。
「おかえり桔梗、いらっしゃい葛城さん。私が桜井です」
「初めまして葛城晴美です、いろいろと教えて下さい。よろしくお願いします」
「ここは署じゃないんだから、そんなに固くならないで」
その後、女子会が始まった。
そして、
「桜井さんは、どうして警察官になったんですか?」
桔梗はビックリした、以前聞いた時は(今は話せない)と華さんは言っていたから。
「私の父も警察官だったんだ。
10年前に巡回中に殉職したんだ。犯人はまだ捕まっていない。私はこの手で犯人を逮捕するつもりだ」
「そういうことって、映画やドラマだけかとおもってましたけど本当にあるんですね」
葛城は他人事のように興奮している。
「それで犯人の目星は付いているんですか?」
「おおよその見当は付いているんだが、証拠も確証もないんだ」
「私、無事に警察官になれたらお手伝いします」
「ありがとう、でも危険過ぎるから、気持ちだけ有難く受け取っておくよ」
その後、葛城は友達に会うからと言って帰っていった。
桔梗はストレートに華に聞いてみた。
「華さん、何か隠してますよね」
「何の事だ?」
「警察官になった理由です」
「やっぱり桔梗は鋭いな。この際だから話しておこう。警察官になった理由はさっき言った通りだ、だが続きがある」
「それは?」
「父は巡回の途中で言い争っている声を聞き、声のする方へ向かい、応援要請もした。ふたりを見つけ声をかけようとした時、ひとりの男がもうひとりを刃物で刺した。それを偶然通りがかった一般市民が目撃してしまったんだ。そして目撃者を始末しようと男が襲いかかった時、父が間に割って入り、犯人と揉み合いになり胸をひと突き、即死だったよ。その時、応援が駆けつけたので、犯人は逃げて行った。その時の警察官が桔梗も会ったことのある犬塚刑事だよ。
犬塚刑事は父の後輩でバディだったそうだ」
「その目撃者って、もしかして私達ですか?」
「桔梗は覚えていたのか」
「私は父に抱っこされて寝ていたので、夢かと思っていたんです。父も母もその話しはしませんでしたから」
「そうか。犬塚刑事は犯人を遠目でしか見ていないので顔もハッキリとはわからなかったそうだ。桔梗のお父さんたちも協力してくれたのだが、モンタージュを作れるほどではなかった。それに、犯人に狙われる可能性もあるので、身を隠すようにしてもらったそうだ」
「それで、引っ越しをしたんですね。わかりました。話してくれてありがとうございます。私も犯人を逮捕するの手伝います」
「この話はまだ終わらないんだ。
桔梗の両親を殺害した足立を操っていたのが、父を殺害した容疑者によく似ていると、犬塚刑事が言うんだ」
「それって、目撃者である私の両親を殺害する為に足立を使ったってことですか」
「私と犬塚刑事はそう思っている」
「その容疑者のなまえは?」
「黒鉄銀次だ」

           つづく

6/30/2024, 10:39:38 AM