執筆リハビリ文章まとめ

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#友達

 明日会えたらいいね。
 カナとリリィはそう約束し合った。
 果たせそうもない約束だとは思った。けれど、自分たちの友情をここで終わらせるわけにはいかないという熱い使命感が、互いの心にあったのだ。
「離れ離れになっても、ね」
「うん、会おうね」
 私たちは、終わったりしないから。
 疎開先は、中国だった。リリィはアメリカに行く。
 この国の一般市民を移民として受け入れるには、なにぶん人数が多すぎるし、その中でカナとリリィが疎開できるのは、ひとえに両親の仕事の立場が上級だったからである。
 生きていよう。
 生きなければ、明日を見ることもできない。
 カナとリリィは手をつなぎ、黄金に光る稲穂の波を見つめた。この美しい景色も、自分たちの国も、出ていかなければいけないけれど、それでも。
 私たちの友情は、永遠だから。
 青空は夏の名残りを強く残して、どこまでも広く。
 
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 小松左京『日本沈没』オマージュ作品

10/25/2023, 10:32:18 AM