あの人の瞳の色はなんだったけ。
新緑のような深緑だったか。それとも咲き誇る花のような赤だったか。
好きだったのに。
最初は声。次に顔。そして温もり。
記憶を手繰り寄せてもちっとも出てきやしない。
本当にその人がいた事すら危うくて。
その上鬱陶しいくらいの日差しが照りつけてきて嫌になる。
はぁ。と息を吐く。忘れてしまったなら、仕方ない。
思い出せないのなら、それで終わりだ。
額にうっすらと滲む汗を手の甲で拭う。
視界の端で青色が嫌に主張してくる。
あぁ。そうだ。
彼の瞳は、今私の目に映る深く深く、鬱陶しい程の青色だった。
青く深く
6/29/2025, 1:41:30 PM