あかるあかり

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『バイバイ』

 さようならでもまたねでもなく、あのとき僕が口にしたのは「バイバイ」だった。
 深い意図があったわけじゃない。理由は何もなかった。単に口をついただけ。
 そして、その言葉を選んだことが運命を左右したわけでもないだろう。そんな因果を気にするほど僕は迷信深くない。そう、迷信深くないんだ。
 なのにいまでもあの別れの言葉を思い出しては苦しくなる。
 もし、もっと丁寧にあの一時の別れを扱っていたなら、もしかしたら運命はこんなふうに動かなかったかもしれないのに、と。あんな軽々しい挨拶が、あの別れを永訣に変えてしまったんじゃないかと。

 ばかばかしいとわかっているのに。
 毎年この日を迎えては悔やむのだ。

 3月11日。
 君が帰ってこなかった日。

2/1/2025, 10:37:41 AM