sunset

Open App

花束
「やぁ」
『やぁ?』
「久しぶり」
『久しぶりだねぇ』
「今回行ってきた島にはね、花束が落ちてたんだ」
『ふぅん?』
「たくさんたくさん落ちてたの」
『どのくらいなのぉ?』
「道が見えなくなるところまで。ずぅっと」
『へぇ』
「オオクチさん。道って知ってる?」
『知ってるけど、知らないよぉ』
「そっか」
『そうだよぉ』
「何で落ちてるんだろうって気になったからね、ぼくは花束を追っかけたの」
『何でか分かったぁ?』
「ちゃんと分かったよ。せっかちなオオクチさん」
『ふへへぇ』
「花束の先には巨人さんが居てね、どこかのお家の賢いお兄ちゃんみたいに、花束を置いて行ってたの」
『ふぅん?』
「それでね、ぼく聞いたんだ。何で花束を置いてるのって」
『それでぇ?』
「自分は体がとても大きくて、知らないうちにたくさんたくさん小さな生き物を殺しちゃうからだって、巨人さんは言ったんだ」
『それで花束ぁ?』
「うん。それで殺しちゃった生き物たちを弔うんだって、許してもらうんだって、言ってたよ」
『そっかぁ』
「巨人さんの身体にはたくさんたくさんお花が咲いててね、それを引っこ抜いて、巨人さんは花束を作ってたんだ」
『とってもファンシーな巨人だねぇ』
「うん。すごく綺麗な花たちだったよ。お手伝いをしてくれてるんだって、巨人さんは言ってたよ」
『花は知らないけど知ってるよぉ』
「先越さないで!」
『ごめんねぇ』
「ぼくはしばらく巨人さんについて行ってたの」
『何で?』
「何となく」
『そっかぁ。そのままずっと旅しなかったのぉ』
「オオクチさん拗ねてる?気持ち悪いね」
『んひひっ』
「旅はね、ずっとはできなかったの」
『どうしてぇ?』
「巨人さんが崩れちゃったから」
『あららぁ』
「崩れた巨人さんは動かなくなってね、お花たちは喜んでたんだ」
『へぇ』
「私たちの仲間の命を何千年もの間奪い続けた悪しき巨人を、やっとやっとやっつけた!って言ってたよ」
『悲願達成おめでとぉ?』
「ホントにね!」

「今回はここまでね。じゃあね」
『じゃあねぇ』

《キャスト》
・ベニクラゲさん
ふわふわの生き物。オオクチボヤさんが大嫌い。ちょっとだけ賢くなった。
・オオクチボヤさん
ぶよぶよの生き物。ベニクラゲさんが大好き。でも憎い。変わらない。

2/10/2024, 8:51:50 AM