「お前とまた飯が食えればそれで良かった。でも俺は、もう箸も持てねぇんだ」
手があったはずの場所を見つめ、ははっと笑った。初めてあいつの涙を見た。
世界を守るためとかいう大義名分のもと、孤児院から拾い過酷な戦闘訓練を積ませ侵略者と戦わせる。自分たちはただの駒に過ぎないことは気付いていた。多くの仲間を失いながらもあいつと2人、なんとか生き延びてきた。貧相な飯を並んで食うのが唯一の楽しみだった。本当は世界なんか知ったこっちゃない。ただ、あいつと飯が食えればそれで良かったんだ。そんな細やかな日常だけで良かったのに。
12/10/2023, 12:33:21 PM