君はいつも、おおらかで優しい。
ゆったり歩き、何事にも動じない姿は雄々しく、力強い目が美しい。
気性の激しい母と自分勝手な姉を気遣い、人間の遊び相手はもちろん、ウザ絡みも、ため息を吐きつつ相手をしてくれた。
家を出て、たまにしか帰らなくなった私にも、いつもあいさつに出てきて大きな声で話しかけてくれた。
そんな君も年老いて、寝ている時間が多くなり、
あいさつは私が寝床に行くようになった。
ある日、実家から自宅に帰ろうと廊下に出ると、
寝床である洗面室から大きな声で呼ふ声が聞こえる。
側に行くと、君は大きな声でたくさん話してくれた。
今日は元気やなあ、なんて話しながら、たくさん背中を撫でて、幸せな気分で帰った。
翌日、母から君が亡くなったと知らされた。
眠るように静かに。
あれはお別れのあいさつだった。
最後までおおらかで優しい君だった。
*君と最後に会った日
6/27/2024, 11:44:34 AM