かたいなか

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「アラララ、オラララ、ららら。
ゲームキャラの鳴き声ネタとか、歌のタイトルとか、それから映画やアニメの名前にもあるわな」
個人的に第一印象は某モンスター、灰色の抜け殻さんだわな。某所在住物書きは昔を懐かしんだ。
なお、未プレイである。第4世代と、飛んで第6世代で、アラララ、物書きの時は止まっている。
今の図鑑は全何匹??

「ご当地キャラの名前にもなってんの?」
ららら、ラララ。「らららとは」の検索結果に出てきたのは、某氏のPRキャラクター。
ポケ◯ンもそれぞれ、ご当地キャラもそれぞれ。
双方、急激に個体数を増やしたのは、それこそ「あららら」の驚愕かもしれない。

――――――

前回投稿分から、続くかもしれないおはなし。
最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内には、かつて昔の東京に当たり前のように在った美しい花畑が残っており、今まさに春の花が咲き誇る頃。
雪国では冬終了を宣言し、ここ東京では春到来を告げる「スプリング・エフェメラル」が、
敷地に黄色と白と、少しの薄紫を散らしている。

フクジュソウは丁度、見頃のピークを過ぎ始めた。
今の主役はキバナノアマナ。
ユリ科の小さな黄色い星型。都内のレッドデータブックに掲載され、神奈川等では既に絶滅したとされている、春の妖精である。
「今年も、よく咲いたな」
そのキバナノアマナを、毎年見に来ては写真を撮って、愛でる者が在る。
「新芽もある。来年はもっと、花が増えそうだ」

名前を、藤森という。
風吹き渡り花咲き誇る、雪国の田舎の出身で、
東京で珍しいキバナノアマナは、藤森の故郷の春の日向で、その黄色を温かい陽光に向けていた。
キバナノアマナは望郷の花のひとつであった。

パシャパシャ、ぱしゃぱしゃ。
数を著しく減らしつつある黄色に、ひざまずき、スマホを離して近づけて、また離す。
寂しそうに笑うのは、その黄色が将来、東京からも姿を消す可能性があることを知っているから。
「綺麗な黄色だ」
その綺麗な黄色が、外来種の侵略や人間の心無い開発によって、いずれ姿を消すのだ。
キバナノアマナはAランクの絶滅危惧種であった。

「ん?」
と、しんみりムードのところで唐突にお題回収。
「うた?」
神社敷地内、キバナノアマナの花畑、
片隅で見慣れぬファッションの女性が小さな声でラララ、ららら。花に声を聞かせている。
「誰だろう」

ラララ、ららら。
小さい声に誘われ、藤森は花畑をフララ、ふらら。
歌っている女性は藤森に気づかない。
藤森の退廃的なそれとは反対に、幸福そうな笑顔でもって、ラララ、ららら。
彼女は藤森の知らない歌を、キバナノアマナに嬉々として、聞かせていた。

「わわ!ここ、こんにちわッ!!」
こんにちは。 歌、お上手ですね。
そんな藤森の声がけに、不思議な歌姫はコテン!
尻もちをつき、起き上がって、相当に慌てている。

「あ、あの、アテビといいます、『領事館』で、今年から、働いてますッ」
「アテビ」と名乗った女性は、藤森が聞いてもないことをアラララ、あららら。
「あのっ、私の故郷の世界、黄色は幸福の色で、
その年の春、外で見つけた黄色い花に歌を聞かせると、良いことがあるって言われてて」
それで、この、星みたいな黄色い花に、歌を。
アテビは握った右手を左手で隠し、すりすり。さすって照れ隠し。心細いのだ。

「私の故郷の『世界』」なる言葉は引っかかる。
日本にルーツを持つ人ではないのだろう。
藤森は想像し、誠実に言葉を渡した。

「キバナノアマナです」
「きばな?」
「黄花の、甘菜。『春の妖精』のひとつです。
このあたりでは、とても貴重で珍しい花です」
「はるの、ようせい」
「きっと、良いことがありますよ」

「あっ、あの!私の世界にも!」
私の世界にも、「春の黄色」って言葉が。
アテビの瞳が友好に輝き、藤森をまっすぐに、
「あ、 ア……!!」
見つめたと思うと、すぐ「藤森の背後」に視線が釘付けとなって、アラララ、あららら。

「どうした」
藤森の背後から、静かな男性の声がした。
「気にするな。おまえの世界に、なんだって」

藤森が振り返った先に居たのは、3月から藤森の部屋の隣に越してきた「条志」と名乗る男。
藤森が振り返っている間に、アテビは一目散。
走って遠くへ逃げてしまった。

「『機構』の人間だ」
藤森が尋ねる前に、条志が解説を始めた。
「きこう?」
「ここの人間ではない。『ここ』を、発展途上の難民シェルターか何かと勘違いしている連中だ」
「はぁ」

「何かあれば、すぐ俺に言え」
アテビを追うように、条志も藤森から離れていく。
「相談には乗る。俺に、隠し事をするなよ」
ひとり残された藤森は、何が何だか分からない。
ただキバナノアマナと一緒に、風に吹かれて、
小さく、首を傾けておったとさ。

3/8/2025, 3:00:01 AM