『夢を描け』
夢は、時として体のいい言い訳になる。
「うちの子、結婚も就職もしなくて困っちゃう」と、ご近所のWさんが愚痴りに来た。
話を聞くと、なんでも「自分には夢があるから」と言うらしい。
「でも、それに向かって勉強しているわけでもないのよねぇ」
……なるほど?
「いつまでも私たちが元気でいられるわけじゃないんだし、負担も大きいし、いい加減自立して欲しいのよ」
お子さんが実家に寄生している現状は分かっている、と。
「具体的な夢の内容を聞いても、どうにもハッキリしなくて。なにがしたいんだか」
でしょうね、単なる言い訳ですから。
「お願いできるかしら?」
ええ、わかりました。こちらで処理致しましょう。
「本当に? 家庭内のことをお願いするのはどうかと迷っていたのよ」
いえ、お子さんが拗らせて家庭内暴力に走ったり、刃物を持って近所をうろつくようになると、町内の治安に関わりますから、町内会のご近所トラブル処理係取り扱い案件です。
「助かるわぁ。あ、孫の顔は見たいから、子供は作れる程度にお願いできる?」
わかりました。今は矯正にもレベルがありますから。
「ああ、ホッとした。孫ができたら何しようかしら。夢が広がるわぁ」
夢を見るのは素敵なことですね。
5/10/2025, 8:00:23 AM