NoName

Open App

仲のいい友達と別れる時の「さよなら」は悲しくない。またいつか会えることが分かっているから。

今日もいつものように別れるだろうと思っていた。
ジリジリとした太陽の下で待ち合わせをして、涼しいカフェでお茶をして、そして映画を見た。
なんの変哲もない幸せな日だったから。
けれど、違っていた。
「じゃあね、さよなら」
「さよなら」の前に「じゃあね」が加わっただけなのに、僕は闇雲に嫌な予感がしたのだ。
「またね、さよなら」
だから僕は念押しするかのように、「またね」を「さよなら」の前に加えた。
明日また会えるよね、と。
彼女は何も言わなかった。赤い夕日の中に消えていく彼女の背中は、今にも飲み込まれそうな黒色だった。

8/21/2024, 5:16:44 AM