昔馴染みの酔い客から極めて達筆で手紙が寄越せられる。
ランプの下でも分かるほど焦げ色の派手な顔をしていたあなたから、前略で始まりかしこで終わる文をもらうとは、思わなんだで戸惑っている。
もう何年も会えていないのは、触れてはいけない事情があるのかと思っていた。
嫁いだ先は随分とご立派で、目まぐるしい日々の中で、こうして束の間を見つけて文を認めてくれたのだね。
聞いたことないような風靡な時候をどこで覚えたの。
ほんとはあの馬鹿騒ぎは大嘘で、あたしを楽しませようとバカを精一杯担ってくれていたのだろうか。
でもね、御身お大事に、なんてこの仕事選んだ奴には掛けてはいけない心苦しいひとことだわよ。
御身お大事に、それは私があなたに伝える言葉です。
送り元を見るに決して遠くはないけれど、電車で20分の距離が今では外つ国のように遠いね。
束の間を邪魔しないように本題から入る手紙を返すことをどうか赦して。
あなたの好きな酒で濡らした切手を貼ります。
お代わりなければいいけれど。
遠い街で-
2/29/2024, 1:49:40 AM