余・白

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ー入道雲が喰らった初恋ー




入道雲が君の全てを覆い隠した。

あの夏 君は、本当はなんて言いたかったったのだろう。


「俺らは、ずっとこの距離だと思うよ。
 良かれ悪かれね。」

真夏の空の下、大きな入道雲を眺めていたら届いた
君からの返信メール。
そこに書いてあったこの一言を、三年経った今もずっと忘れることができない。


誕生日おめでとう。
大人になってもずっと仲良しかな
それともお互い家族ができたりして、
会わなくなるのかな なんてね




確か、僕はこんなメールを送ったと思う。







先に好きになったのは、僕だと思う。
君は知らないだろうな、話したことがないから。

ヤンチャで派手で人気があって、大体の先生のお気に入り。一生関わる事なんてないと思ってた。

隣の席になった君は、思ったよりフレンドリーなやつで、僕がなにげなくいう一言にいちいち大爆笑してた。
中学に上がるまでには、周りからもセット扱いされるくらい仲が良くなっていた。





君は、僕になんども「好きだ。」と言ってくれた。
その度にこの言葉が僕の頭を支配する。

「大切すぎてどうすればいいかわからない」

君を失いたくなかった。
恋愛関係なんていつかは終わる。
長い長い学生生活の間、僕はただ必死に
''君との関係を永遠のものにしよう''と友達に徹し続けた。

二十歳の誕生日
僕が抱くこの気持ちは愛である、
そう気づいたときには、もうすべてが遅かった。


「俺らは、ずっとこの距離だと思うよ
良かれ悪かれね。」


いつからだったのだろう?
君に近づこうとするのに、ある一定の距離までしか近づくことができない。
それ以上先は、どうしても進む事ができなかった。
ーお前とは友達以上にはなれないよー
ーお前に俺の弱さの全てを見せられないー
そんな声が、聞こえた気がした。

失いたくないが故に僕がとったあの行動は、
僕らの絆を永遠にするものではなく
君と僕の間に目には見えない深い溝を作る行為だったと、僕はその日初めて気がついた。

君は恋人の家に入り浸るようになった。
弱さを共有し、互いに慰め合いながら生きているらしい。
永遠を望んだその先に僕が見たものは、
友情にも恋愛にもなりきれなかった行き場のない愛情と歪んだ執着心だった。






あのメールをもらった夏から三年。
君への愛情が、まだあと少し、ほんの少しだけ残っている。この夏に全て溶けてしまいそうなほどに、ほんの少しだけ。
 
「俺らは、ずっとこの距離だと思うよ。
良かれ悪かれね。」

君のことだからきっと、僕を傷つけまいと遠回りして言葉を選んだんだろう?
あの夏、本当はなんて言いたかったの?


見上げた空に、あの日見たような入道雲。 



僕の中にある君への想いを全部、
この先永遠に覆い隠してくれる気がした。







ー入道雲が喰らった初恋ー終

6/30/2024, 3:38:47 AM