「今まで生きてきて、女性にプレゼントをあげたことがないんだ。だから、何を選べばいいか分からなかったんだ」
「あのね。こういのって気持ちなのよ。私はあなたが悩んで選んでくれたものなら何だって嬉しいの」
「ダイヤモンドヤスリでも?」と僕は聞いてみた。
「どう悩めば、ダイヤモンドヤスリという結論にたどりつくのかしら」と彼女はため息をついて言った。
「もしかして、あなたは私へのプレゼントにダイヤモンドヤスリを選んだの?」と彼女は怪訝な顔で聞いてきた。
「いいや、違う」と僕は慌てて否定した。
肩に提げたトートバッグから、急いで包装された袋を取り出した。手のひらより少し大きく、赤いリボンで入口が包装された袋だ。
「これだよ」と僕はそれを彼女へと差し出した。
彼女は驚いた顔で、それを受け取った。
「開けていい?」
「いいよ」
彼女は器用に入口のリボンを取り、袋の中身を取り出した。
「布巾?」と片手でつまみながら、不思議そうに顔を歪めた。
「悩んだ結果、1番布巾が良いと思ったんだ。この前、布巾が足りないって言ってただろ?もちろん、香水とかそういう定番も考えてみたさ。でも、それらを考えてたら、必ずしも君が定番を支持しているとは限らないと思ったんだ。だから、風情には欠けるけど、堅実に実用的な布巾にしたんだ」僕は恥ずかしそうにそう言った。
彼女は僕の目をじっと見つめながら話を聞き、聞き終わると、僕の頭の上の何も無い空間を10秒ほど見つめて、そしてまた僕に目線を合わせた。
「確かに布巾は必要だったわ。布巾って凄くいいの、世界大戦での鋼鉄みたいに、家事では色々な使い方があるの」彼女は優しくそう言った。
「喜んでもらえて良かったよ」と僕は言った。
「とても嬉しいわ」と彼女は言った。
1/22/2025, 3:46:54 PM