【夢が醒める前に】
ゆらり、ゆらり。微睡みに沈んでいく。
意識が浮いたり沈んだり。
緩やかに運んでいく夢の中で君が僕に笑った。
春に芽吹く若葉のような柔らかな色。
穏やかな黄緑の瞳がきらり、と輝いた。
君の口がゆっくりと言葉を紡ぐ。
けれどその声は聞こえない。
「なに?!なんなの、聞こえないよ!」
そう叫ぶ僕を君は仕方ないわね、
と呆れるように優しい瞳を細めて見る。
そうしてゆっくりと踵を返し向こうへと一歩進めた。
「やだ、ま、まだ、いかないで、
ねえ、きみに、きみにつたえたいことばが、」
でも君は僕を振り返らずに霧の中へと消えていく。
は、っと目が覚めて隣を慌てて見れば
すやすやと寝息を立てる君がいた。
「ねえ、____。」
そう耳元で囁けば驚いたように見開かれる君の瞳。
僕を映すその黄緑の艶やかな瞳に
夢の中とは反対に僕が笑いかける。
ねぇ、君。
この現実という穏やかな夢が醒めるまで。
僕の隣で笑っていてね。
3/20/2024, 10:47:20 AM