らん

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よく晴れた日。まさにBBQ日和だ。
「うわ!後で川入ろ!?」
「いいね!絶対気持ちいいよ!」
大学4年生の夏。幸運なことにサークル仲間は自分も含めて、早々に納得のいく企業への内定を貰うことが出来て、大学最後の思い出づくりに集まってBBQをすることができた。
ザクザクと野菜を無心になって切っていれば、視界の端に重そうなものを持つあの子が入ってきた。そこへ颯爽と彼が近付いていく。
「俺が運ぶよ。」
「え、私でも別にそれくらい持てるって!」
「はいはい。俺が運びまーす。」
「もー!!」
サークル仲間との楽しい時間。移動中からずっと楽しかった。思い出話や卒業旅行の計画にも花が咲いていた。
「あの2人、ついに付き合い始めたんだってね。」
他の作業をしている子たちも同じ光景を見ていたのだろう。
「ねー!アイツのアプローチ凄かったのに、あの子鈍感だからさあ。」
彼が彼女にしてきたたくさんのアプローチは、私がアドバイスしたものがいくつもある。話を聞いて、相談に乗れば乗るほど、彼の一途さが素敵だと、いつの間にか目で追うようになっていた。だから、誰よりも彼には幸せになってほしいと思った。
「え!?ちょ、大丈夫!?」
肩を叩かれて、顔を覗き込まれて、初めて自分が涙を流していることに気付いた。手元を見れば、まな板の上には、輪切りにされた玉ねぎがあった。
「マジで玉ねぎ目に沁みるわ。」
「なんだ、玉ねぎか!吃驚した!」


涙の理由

9/28/2025, 5:43:19 AM