谷折ジュゴン

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創作「海へ」

お盆の昼下がり。海へ散歩に向かうと海月が沢山、海面を漂っていた。海月は幻想的な生き物である。 だからつい、想像したくなってしまうのだ。

静かな夜の海で生を受けた海月は、穏やかな波をゆりかごに、蝶よ花よと育まれる。そして、うつろいゆく空模様に翻弄されることもなく、広く厳しい海原をのらりくらりと揺蕩う。

それから、真っ白な砂浜に打ち上げられて、 裏返しになった体を波に洗われながら、ここまで生きられた誇らしさをそっと噛みしめる。最期には、さよならを言う前に影も形もなく消えゆく。

時にはつまらないことでも真剣に考えるのも悪くない。ゆったりと漂う海月たちを眺めていると、そう思えた。それが、ありがたいと思ったのだった。

明日、もし晴れたらまた海に来よう。わずかに秋の空気を含んだ潮風をあとにして、のんびりと帰路に就いた。

(終)

8/23/2024, 12:09:07 PM