今年も暑い夏が来た。
8月の容赦なく降り注ぐ陽射しに文句を言いながら歩き続け辿り着くのはいつもの向日葵畑だ。
今日も居るはずの無い君の姿を探す。
この大きな向日葵の陰に隠れた君が顔を出すのではないかと。
広いツバの麦わら帽子を被った君が悪戯っぽく笑って、僕の名前を呼んでくれる。
大きな瞳が真っ直ぐこちらを見つめている。
「こっち来てよ」と白く華奢な手が僕の手を引く。先の見えない向日葵畑を突き進む。
そして高台まで抜け階段を上り、僕をまた置いていく。
「私を探して」
そう言って君は向日葵畑に消えた。
今日も僕は1人向日葵畑を抜け高台に登る。
向日葵畑の中に埋もれた麦わら帽子を探す。
一際眩しい笑顔を放つ一輪のひまわりを。
君の影を追っている。記憶の底の君の姿を。
蝉の声だけが頭に響く。
夏の陽射しが僕を差し続ける。
#夏の影【麦わら帽子】
8/12/2023, 6:00:44 AM