テーマ:『開けないLINE』
(電話…いや、それともメール?いや、どっちも重いよね。
なら他のSNSで…
あっ他のSNS、知らないや。)
最初の困惑はそんな風だった。
LINEが使えなくなっていた。
家族や世間の様子を見る限り
社会問題…というよりかは、私的な問題のようであり、
詰まる所、私のスマホだけが故障、エラーを起こしている様だった。
「あっ、いま学校終わったんだけど…
うん。今朝言ってた通り、ちょっと本屋さん寄ってくるから。」
家族との連絡は何も問題が無かった。
1日中話すことも珍しくない間柄の相手だ、何も気負わずに電話が出来て、
そんなことをしなくても、嫌になるくらい時間が共有される。
…問題は友達、もっと言えば、知り合いとの関係だった。
「ねえ、昨日締め切りだった、あのアンケート、出してないの貴方だけなんだけど…」
「えっ、あっ、ごめん。
でも、それ私聞いてない。」
「LINEで募集してたアレよ、アレ。」
「あぁ〜、ごめん。
ちょっと今LINE使えんくなってて…」
「ホントに昨日のアレ、面白かったよね。いや、マジあんなオチになるとは予想もできんかったわ〜」
「ねぇねぇ、何の話?」
「あれだよ、あれだよ。昨日回ってきたLIVE動画の。皆、喰い付いて、勝手に実況始めちゃって…大大盛況だったじゃん。」
「ちょっと、前、言ってたの忘れたの。LINE使えないって」
「あっ、ごめん。つい。」
「許して使わす。というか何言ってんの。別に謝ることなんかじゃないよ。
それより、そんな面白かったの?それ。」
「うん。あーかいぶ、あったはずだから見てみるといいよ。ほら確かこの履歴の…」
連絡を取る前にとれる手段、そしてとる相手との親密度を考える。
そんな一手間が私とLINEで繋がっていた彼女達との距離を空け、
未だ繋がったままの彼女達の話の早さが、
そのままで置き去りになった私に、
囚人のような疎外感と劣等感を感じさせた。
私はふと、
喋れなくなったみたい
なんて思った。
…他のコミュニケーションで十分に代用可能ということは、分かるから過剰な例えだとも思ったが、
けれど、筆談を勧められる人の気持ちってこんなものじゃないかと、
私には何となく、
そう、あくまでも何となく、
思ったのだ。
結局、2週間位でLINEは使えるようになった。
私はこの2週間の間にで何か大切な連絡があるかどうかを確認して、
案の定、別にそんなものはないことを理解して、
それから、そこそこ仲の良い彼女達に尋ねた。
「ねえ、なにかオススメのSNSって知らない?」
9/2/2024, 8:45:14 AM