いしか

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踊るように、君は飛ぶ。
跳ねるように、君は飛ぶ。

「走り高跳び、優勝は宗田 将暉(そうだ まさき)選手です!」

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「おめでとうございます。宗田選手」
「ありがとうございます。でも、もう大会は終わったから、普通に”くん“付けで良いよ?」
「あっ!そっか、ごめん!!」
私は、彼が所属している社会人陸上部のマネージャーをしている。普段はフランクにお話をするが、大会中は選手と呼び、少し距離をおいている。

「中田、今日はもう帰宅するの?」
「うん。元々予定は大会だから入れてなかったし、このまま帰る。」
「……そっか、気を付けて帰ってな」
「うん。宗田君もね。」

私は、宗田君の事が好きだ。
けれど、宗田君には、他に好きな人がきっと居る。私には、何となく分かる。
私じゃない誰かに、恋をしている。

「この恋は、叶わないもの。いい加減、諦めないとなー、」
いっその事、宗田君に告白して、玉砕してもらったほうがスッキリするだろうが、それが出来ない私。

私って、狡いのかな?馬鹿なのかな?

でも、それでも、まだ思っていたいと思っている自分がいる。そんな自分を、私は否定出来ない。

「でも、いつかは蹴りつけないとなっ!」

こんな事を考えながら、少し切なくなりながら、私は家へと帰るのだった。

9/8/2023, 3:34:41 AM