池上さゆり

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 きっと生まれ変わる機会はいくらでもあった。それを逃し続けてきたのは自分で。現実から目を背けてきたのも自分で。変わりたいという願いだけが強くなっていった。
 誰とでも話せるようになりたい。誰かに頼られるような人になりたい。自分の意見を言える人になりたい。誰かの愛する人になりたい。オシャレな人になりたい。
 いつ、どこに行ってもひとりぼっちな私ならいつでも変われると信じていた。
 だから、社会に出る前のこのチャンスを決して逃したくなかった。大学受験を終えて、大学生活が始まるまでの間に今ままで蓄えてきた知識を確認していた。
 人との話し方。自分の表情の見せ方。立ち振る舞い。メイク。ファッション。
 大丈夫、完璧だと言い聞かせた。幸い、私が進学する大学に同級生はいない。一人っきりだった高校生活をなかったことにできると思うと楽しみで眠れなかった。どんな人と仲良くできるのだろう。どんな生活が待っているんだろう。
 私は、どう変われるのだろうか。

 昨日へのさよなら、明日との出会いが私を生まれ変らせてくれるはず。

 期待に胸を膨らませた入学式は、あっという間に終わった。隣に座っている人に声をかけることから始めよう。私の新生活はここからだ。

5/22/2023, 2:35:49 PM