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『二人ぼっち』

お父さんは戦争に行ってしまった。

残された僕と妹は、雨風を凌ぐだけの木造りの家屋の中で、身を寄せ合って震えていた。

先日、4歳の誕生日を迎えたばかりの妹は、骨と皮がくっつきそうな程にやせ細った身体をよじって、僕に身を預けてくる。

僕もまた、生きているのがギリギリな妹を愛するように、その華奢な身体を受け止めてあげる。

妹を抱きしめる腕が、ただただ、痛い。
指先の皮膚が剥がれ落ち、骨が張った妹の体に、僕の皮と骨だけの腕がぶつかり痛む。

あぁ、腕が、全身が、痛い。

父が戦争に行ってから、もう何日が経っただろう。
最後の食料は1週間前に底を尽き、僕たちの命を繋ぐのは、時たま降り落つ雨の雫だけ。

音も動物の気配すらない世界の中に、僕と妹は二人ぼっちで寄り添いあっている。

気が付けば。

妹の呼吸が止まっていた。

瞳は薄目で開かれており、光の無い瞳孔が虚無を見つめている。

死。

ああ、ついに僕はこの世界にひとりぼっち。
共に生きた妹もついにこの世を去ってしまった

でも安心しておくれ。
お前を一人にはしないから。

僕は妹の亡骸を強く抱きしめる。

全身の骨が傷んで軋む。
ゆっくりと、瞼が落ちていく。


数日後。

山奥にぽつんと建てられた家屋の中で、痩せ細った骸骨のような体を寄せあって、この世を去っている兄妹の死体が発見された。

軍の計算によれば、兄妹は実に50日もの間、二人ぼっちで命を繋いでいたという。

3/21/2026, 7:11:44 PM