NoName

Open App

「イルミネーション」
唐突にその言葉を思い出した。意味は、覚えていない。

僕はもうどのくらい経ったのか分からないほど長い間この空間にいる。僕1人しかいない暗い空間。ここがどこなのか、一体いつからここにいるのか、僕はなぜここにいるのか、なにも分からない。ただ一つこの空間に特徴があるとすれば、よく分からないものが時々現れるということだけだ。
今、僕の前に現れたのは大きな木とそれを縛るように巻き付く光たちだ。光は様々な色で光っていて真っ暗なこの空間では眩しすぎた。なんて迷惑なものだ。なんだかこれを見ていたら腹が立ってきた。まるで僕のようだったから。大きな木は僕で、光は僕を縛って弄ぶこの空間で、何も出来ない僕を嘲笑っているよう。憎々しい。
「イルミネーション」
そうだ、これはイルミネーションというものだ。どうしてこんなものを知っているのか不思議だが、いつもの事だ。イルミネーション。嗚呼、なんて憎いものだ。その言葉の意味は分からないが。きっと忌み嫌われ、穢らわしい存在に違いない!

12/14/2022, 2:05:30 PM