流れ星に願いを
夜風というものは、嫌いではない。だが、昔の記憶を自分の頭に流し込んでくる。
夜風に当たると、見たい夜空を見る気が無くなるほどに俯いてしまう。学ばない自分が馬鹿なのだろう。
今日は初めて、上を向いてみることにした。その勇気が出たのは、隣にコイツがいるからだ。
何も言わなくなって、目を合わせればソイツは語ってくれる。俺は、コイツの隣にいていいのだと、安心していいのだと、そう言ってくれる。
「なあ、マーベラス」
「なんだよ」
何を言おうとしたのか、自分でも分からない。とりあえず、名前を口にして隣にいることを確認しておきたかった。
「……俺は、成長出来ているのだろうか」
久々の弱音を、人前で吐いてしまった。
「ジョー、お前の思う成長ってなんだ?」
「俺の思う成長……、それは、強くなることだ」
横目でマーベラスを見ると、いつものように余裕をかました表情で笑っている。
「ハッ、テメェらしい。だがな、弱くなることも成長だ」
「……そんなわけ」
「あるぜ」
俺が無意識に出してしまった言葉を無かったことにするように、マーベラスは俺の口元を塞ぐ。
「まあただ弱ったらそれは成長じゃねえけどな。成長ってのはな、一歩進めたらそれは成長なんだよ」
「一歩……」
「その一歩ってのは定義し難いな。ジョーが歩こうとしている道が階段だったら、山岳だったら、宇宙だったら。踏み出す難易度は変わってくだろ」
「マーベラス、お前の隣だったら踏み出す難易度はどのくらいだ?」
「……さあな。あ、流れ星!」
地球では流れ星に三回願いを言うと叶うという迷信がある。マーベラスはそれを聞いてから、流れ星を探していた。
俺も流れ星に願いを込める。
「まあ、俺の隣で歩きたいんだったらもう少し良い顔することだ」
「良い顔?」
そう言うとマーベラスは思いっきり俺の頬を掴んで上にあげる。
「マーベラス、い、いたい」
「俺は流れ星に願ったぜ。宇宙最大のお宝、見つかりますようにってな」
「……俺は、成長できますようにって願った」
どうせ流れ星に願ったって、叶えるために行動するのは自分たちだ。だから俺もアイツも、流れ星なんか最初から一切信じていない。
それでいいんだろ。マーベラス。
「笑え、もっと。信じろ、俺を」
その少ない言葉が、俺の背中を押す。
「ああ。分かってる」
今日は成長できた、そんな気がする。
4/25/2026, 4:48:29 PM