NoName

Open App

「なんてったって、俺たちは、友達だろう?」




 「ねえ葵、もしさ、俺が死のうとしたらどうする?」


 「えっ?」

 俺は、友人である八戸の唐突な言葉に、驚いて、固まってしまう、いつもはこんな事言わない明るいやつなのに、だとか、冗談にしてもたちが悪すぎる、だとかそんな考えが頭の中をぐるぐると回り始める。

そんな事をそうこう考えていると

 「あっはは、冗談だよ葵、いつも元気な俺がそんな事を考えるわけないじゃん」

 
 「びっくりしたぁ、急にそんな事言わないでよ、冗談でも八戸が死ぬとか考えたくない」


 「いやぁ、葵ってやっぱり俺の事好きだよな」


 「ちょっと!茶化さないでよ、、、、もし、悩みがあるんだったら、俺じゃ頼りにならないかもしれないけど、相談しろよな」


 「ん〜妙に優しいじゃん葵〜 そんなに俺の冗談が怖かったのか?」


 「うっ、うるさい!元はと言えば、八戸が変なことをいうから」


 「あはは〜ごめんごめん  あっ、そろそろ、昼休みが終わるなぁ、はぁ、もっと長くなんないかなぁ」


 「はぁ、そんなこと言ってないで、次の授業の準備をしないと」

 
八戸の冗談から始まったこの話題は、授業の準備をしているうちに、さらっと流れていった、そうして、いつも通り授業を受けて、下校して、夜ご飯を食べて、眠りについた


 朝目が覚めて、いつも通り、学校に登校して、いつも通り朝礼が始まって、また、いつも通り授業を受けてって、そうなると思ってた



 学校についた、でも、今日は八戸が来ていない、あいつはいつも早いのに、今日は朝礼の開始前になっても一向に来なかった
昨日のことを思い出し、不安が募り始める。


先生が入ってきて朝礼を始める、、、が、先生の雰囲気がいつもとは違っていた、何処か上の空のような気がした

 
「みなさん、おはようございます、、、今日は、残念なお話があります、、、八戸くんが、自宅で首を吊って、自殺した、と、学校に連絡がありました」

「えっ、あの八戸くんが?」

 その声を皮切りに、がやがやと教室内が、騒がしくなる


 俺は、そんな声も聞こえないまま、教室を飛び出した


「ちょっと!葵さん!」


 教師のそんな声も無視して、俺は走り出す、目指すのは、八戸の家、周りの音も聞こえないくらいに、俺は走った


 数十分で着く道だったけれど、俺には、それがひどく遠く感じた


 どうにか八戸が住んでいるアパートにたどり着き、肩で息をしながら部屋の前まで行く、そこには、警察と八戸の母親が居た


 ゼェゼェと肩で息をする様子の俺に八戸の母親が気がついたのか、声をかけてくる


 「葵くん?」


 八戸の母親の声は少しかすれていて、先ほどまで泣いていたのだろうと感じる

 
 「あっ、あの!八戸が、自殺したって、本当、、ですか?」


 そう俺が言い終わると、八戸の母親は、涙を浮かべながら、答えてくれる

 
 「うぅっ、私が家に帰ってきた時には、冷たくなってて」

 
 その言葉に、ようやく実感が湧いてくる、気づけば、涙が流れていた


 「、、、うっ、嘘だろ、八戸、なんで」


 昨日のことを思い出し、俺は、ひたすらに後悔をした


 
 どうにか涙が落ち着いて来た頃、八戸の母親に、とりあえず上がって行ってと声をかけられる、いつの間にか警察の人は居なくなっていた


 「葵くん、落ち着いた?飲めるんだったら飲んでね」

 
 そう行って、八戸の母親は、お茶を出してくれる、だがとても手を付けられる気分じゃない

 
 「そういえば、警察の人がコレがあったって」

 
 そう言って手紙を渡される、手渡された手紙をみてみると、葵へ、と書かれていた


 (はぁ、遺書まで書いてあったんだ)

 
 震える手を抑えながら、手紙を読み始める

 
 葵へ、こうして手紙を読んでるってことは、俺死んでるんでしょ

 なんでって思ってるでしょ、でも、それは教えてあげない。

 葵にも母さんにも関係ない、俺の問題だからさだから、俺のことはとっとと忘れて。
 
 でもただ、もし叶うんだったら、葵とずっと一緒にいたかった。

 最後に、ありがとうと、こんな手紙を残してごめん。            八戸 祐希より



 

 手紙を読み終わり、手が震える


 (なんだよ、なんだよ!それ俺の問題だからとか、なんで、なんで俺を頼ってくれないんだよ)

 
 腹の底から怒りと後悔が湧いてくるが、それを向ける相手はもう居ない。


気づけば、夕日が昇り始めていた、夕日に照らされて、これ以上いると邪魔になると思い、八戸の母親に挨拶をして帰ろうとするが


どうも帰る気が起きない、いろいろな感情がごちゃ混ぜになり、収まらない


気づけば、俺は、海に来ていた


海を眺めて、夕日に目を細める。


ふと、手紙の内容を思い出した。


(ずっと一緒にいたかったかぁ、それは、俺も思っていたけど、まさかお前が先に居なくなるとかありえねぇ)


俺にとっては唯一無二だったんだけど


まあその唯一無二の友達の願いだ、叶えてやらないとな


俺の足は、海底へと向かっていた。


「なんてったって、俺たちは、友達だろう?」


徐々に海底へと沈み、俺は意識を手放した
 

10/25/2024, 1:55:51 PM