『太陽の下で』2023.11.25
普段は夜の世界にいるので、こうして明るいうちに出歩くのは新鮮な気分だ。
これから向かうのは明るいライトの下。ライブ会場である。
会場が近くになると、女性客が増えてくる。誰も彼もみな、楽しそうな笑顔を浮かべていて、誰か好きだとか誰がカッコイイだとか話している。
自分もこれから、その誰かのパフォーマンスを体感するのだというのに、耳はすっかり仕事の耳になっており、職場の嬢たちとの話題を探している。
自分のようなものがいることが女性たちは珍しいのか、ちらちらとこちらを見ている。誘ってくれた本人は、男性客もいるから大丈夫だと言っていたが、どうみてもカタギでない人間がいれば浮くだろう。
そういうちょっと抜けているところが愚かではあるが、可愛いところでもある。
彼は最近、デビューしたばかりのアイドルだ。自分が働いているキャバクラに客としてきていて、どういうわけか「そういう仲」にまでなった。
今日は彼の所属するアイドルグループのミニライブがある。わざわざチケットも用意してくれたというわけだ。
正直、彼に招待されなければ、こんなところには来なかった。断るつもりですらいたが、気まぐれが働いてこうしてここにいる。
そして気まぐれに物販列に並んで、彼の写真を買った。客としてでもそういう相手としてでもない、アイドルとしての笑顔を浮かべた彼がそこにいた。
ライブでも彼は弾けんばかりの笑顔やクールな表情でファンを魅了していた。
室内とはいえ、太陽の下での彼は、まばゆく輝いていた。
11/25/2023, 1:31:16 PM