駒月

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 クリスマス──毎年特に何をするわけでもなく、いつも通りに過ごす。
 いつも通りの食事をして、いつも通りに仕事をこなし、部屋の模様替えなどはせず、ツリーやケーキもない。
 無宗教だし季節のイベントには興味がない、ごく普通の……言い換えればつまらないアラサーの男だ。

 そして今日もストーカーに遭った。
 女子高生のようだが、そんなものは関係ない。知り合いであるかのように馴れ馴れしく寄ってくるものだから迷惑だ。

「あっ、イルミネーション!」

 声を弾ませ彼女が指差した先にはクリスマスツリー。駅前の広場が輝いて見える。
 こんなものが嬉しいのか、と思う。俺にはわからない。幸せな気持ち?わからない……俺には縁遠いものだから。
 はしゃぐ彼女の隙を見て、人ごみの中に紛れた。今日もどうにか撒けて安堵する。

 結局、人はいつも通りが安心するし楽なのだ。イレギュラーなことがあれば疲れてしまう。
 行きつけの店の弁当をあたためてテーブルに置いた。先程ほんの気まぐれで買った白くて小さいクリスマスツリーの隣。ツリーはスイッチを入れると、駅前のと同じようにライトが光るものだった。
 何故買ったしまったかわからない。これが綺麗だと思えれば、彼女のように輝きが……人の心が少しは戻るのかと。そんな考えからだったのかもしれない。眩しく映った横顔を思い出し、いやあれはストーカーだ、と自分に言い聞かせる。

 今年のクリスマスがいつもよりざわめくのは、何故だろうか……




【クリスマスの過ごし方】

12/26/2023, 4:22:54 AM