さや

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胸の鼓動

憧れの先輩の隣にいるときは胸の鼓動がうるさい。
高校時代吹奏楽部に所属していて、2年上の先輩にトランペットがすごく上手な先輩がいた。カリスマ性があり、周りから一目置かれ部員や先生、他校の生徒などたくさんの人から人気を集めていた。私は高校生の間は先輩に近づくことはできなかった。
高校を卒業して吹奏楽部の定期演奏会にOBステージで参加することになった。私はトロンボーンを担当している。OBステージ本番の席順を相談することなくなぜかトップの位置になった。ひな壇の上段はトランペットトトロンボーンが乗るため、トップの位置は隣がトランペットになる。前日リハで隣に憧れの先輩が座るとわかりとても嬉しかった。胸がドキドキ緊張しているが、浮かれてフワフワしている変な気分だった。
リハ中先輩は時々話しかけてくれた。
「この曲やったことないけど大丈夫かな〜」
「ごめん、ペン貸してくれない?」
憧れの先輩の隣で演奏して、普通に会話できている瞬間、瞬間が夢のようだった。
OBステージ本番、憧れの先輩と同じステージに立てるだけでも嬉しいのに、隣で演奏できることをかみしめて演奏を終えた。
演奏が終わり拍手を浴びながら、隣の先輩から
「今日はありがとう。」
と言って手を差し伸べられた。
私はびっくりしたが、なんとか手を出し握手した。
その後ステージの照明が落とされ私は放心状態になった。先輩と握手できたことが夢のようで感情が追いつかなかった。
感情が追いつかなかったが、胸の鼓動だけはとても速く、うるさく、喜びと共に血が全身をかけめぐっていた。

2024.9.8 10

9/8/2024, 1:43:29 PM