指を掛けた引き金に、力を込めた。
腕の震えが止まらない。
目標を捉えられない。
止まってよ、お願い。
撃たなきゃ。
なんで、引き金を引くだけなのに。
………いや、
やっぱ、だめだ。
”撃てない”。
銃口の先には、幸せそうに笑っている君がいるから。
君がふと私の方を向いた。
視線で気づいたのかもしれない。
目が合った。
私は、はっと我に返った瞬間、
力が入らなくなって、地面にへたりこんだ。
あぁ、やっぱり撃てなかった、。
ごめんなさい。
ごめん、こんな事してごめん。
ずっと親友のフリしててごめん。
謝りたいことがたくさんあった。
それが絡まって頭の中でぐるぐるしている。
君は、一緒に居た友達と離れて私のもとに走ってきた。
なんで、
こっち来ないでよ、こんな私見せたくない。
そして、君は私の手に握られている拳銃に目を落として、
それに気づかないフリをして笑った。
「大丈夫?」
そんな優しさに、
自分が情けなくなって、後悔とか、罪悪感とかでいっぱいになって涙がぽろぽろと流れた。
「ごめん、ごめんね…ごめんなさい」
ただひたすら謝る私に何を思ったのか、目の前に君の手のひらがあった。
微笑んでる君。
恐る恐る、震える手で君の手を握った。
手を引いて立ち上がらせてくれたあと、
君はなんて事ないように、いつもの笑顔で言った。
「アイス買って帰ろっか」
「でも、…」
命令に逆らったから、君の身も危ないんだよ。
そう口を開こうとする前に、
君は突然駆け出した。
見慣れた、悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。
色んなことを飲み込んで、静かに頷いた。
責任は全部私が負えばいい。
そう思って、
繋いだ手に力を込めた。
10/7/2024, 10:58:55 AM