シシー

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「ただ可愛がられたいだけなら簡単だよ」

「気に入られるとなると少し難しくなるかな」

「頼りにされるのも、信頼関係を築くのも少しずつ難易度は上がっていくの」

「だってほら、あなたもそうでしょ」

 そこに1輪の花を持って立っているだけなのに目が離せない。きれいとか、かわいいとか、そんな俗物的なものじゃない。初めからそこにあったかのように溶け込んで、それでも尚失われない個が立っている。
 夏の影を映した縁側に1人、陽射しを受けて光る花が1輪。それぞれの写真を切って貼り合わせたかのような視えない境界が1人と1輪の間にある。

「あなたは上手くやれてるよ」

 そんな訳ない、そんな訳ないんだ。
だってここは貴女の場所であって私の居場所なんてどこにもない。だから隅の方で小さいままだったのに。
 そんなふうに、簡単に、手折るなんて。

『うれしい』

 貴女のおかげで私が輝ける。
 仮死したそれはあと数日も保たない。
 でも私はこれからずっと立っていられる。

 ――だから、私を、折らないで

               【題:蝶よ花よ】

8/8/2024, 11:22:37 AM