弟と二人、部屋の片隅で寄り添って縮こまって眠る。
いつ誰が近付いてきても素早く動けるように、横になることはしない。
寒くはないだろうかと拾ったばかりの薄汚れた薄い毛布を弟の肩まで覆うと、少し身じろぎをした。
野宿続きだった為、少しでも雨風が凌げる場所が確保出来たのは良かったものの、それでもまだ小さな弟には過酷だ。文句ひとつ言わないけれど。
「う…あ…」
熟睡出来ないせいだろう。
目を閉じたまま悪夢に魘される弟に「大丈夫だよ」と囁きながら体温を分け与える。
「…」
眉根を寄せたままだったがそれでも静かになったことに安堵して、はたと今に自分の言葉を思い返して苦笑する。
一体何が大丈夫だというのか。
この小さな手足では何ひとつ守れる保証もないというのに、勢いだけで混乱する弟をあの場所から連れ出して。
誰か大人に頼れば良かっただろうか?
けれどそれこそ助けになってくれる保証もないのに、そんなことは出来なかったのだ。
「…はやくおとなになりたい」
白い吐息と一緒に吐かれた言葉は虚しく響いて、どうにもならない現実に少しだけ泣いた。
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12/7/2023, 5:52:20 PM