「No.06」
“先生”が俺に声を掛けた。
「お前、私のことを嫌っているね?」
ピクリと身体が跳ねた。
「気にしないでいいさ。嫌う理由は充分ある。」
口から気泡が漏れた。
ポラリスの中は溶液で充満されていたため、酸素はチューブを通して送られていた。
「さぞ此処が嫌なんだろう?」
先生は俺を嘲笑った。
「地獄だな。」
先生は、無数のコードを掻き分けて、ポラリスに優しく触れた。
「お前がもし、自力でこのポラリスを抜け出せて、自由を手に入れたとしよう。だかそれは、本当の自由なのか?
私は、死にものぐるいで殺しにかかるだろう。政府も、私の実験の全容を知るお前を死にものぐるいで探すだろう。捕まったら即解剖だ。」
「もう一度聞く、それは本当に自由か?
確かに出たいと思えばこのポラリスは牢だな
でも出たくないと思うなら、これは城だ。」
「天国か地獄かをよく見極めるんだ─────06」
5/27/2024, 10:25:16 AM