晴れると思っていた帰り道
朝天気予報で見た「ところにより雨」が自分の住む街だとは思わなかった
傘ないんだよな
走ればいけるかな
濡れたらまずいものはカバンにしまって、よし走るかって1歩踏み出したとき
急に手を掴まれて
驚いてバッと振り向いた先にいたのは幼馴染の彼だった
”もう!傘ないならLINEしなよ。てか今日の朝天気予報で雨って言ってたじゃん。”
「ところにより雨 」って言ってたよなんて言い返せば
”いいからほら傘入って。帰って一緒にココア飲も?”ってあざとく首を傾げるんだ
きっと彼は知らない
掴まれたままの手だけ温かくなってしまったこと、時々ぶつかる肩に全ての意識がいってしまって話のほとんどを聞けていないこと
……私があなたを愛していること
伝えてしまったらこの関係が崩れてしまいそうで
怖くて寂しくて今日も言えずにココアを飲む
いれたての熱々のココアをテーブルに置いて5分後に”あっココアいれたのに忘れてた”って取りに行くあなた
知ってるよ見てたもん
テーブルに置いてよしって言ってからこっちに来たの
意図して忘れてきたってバレてるから
ごめんね、冷めちゃったかなって渡してくれるあなた
好きって言いそうになっちゃうからやめてよ
何年も前から知ってるでしょ
私が猫舌なこと
テレビをつけてバラエティ番組を見るのもいつもの流れ
あなたは笑ってるけど私は笑えないの
テレビを見るあなたの横顔から目が離せないから
こうやって見られてることにも気付かないんだろうな
”あはは!ねぇ、これめっちゃ面白いね!ね!…ちょっと!聞いてる!?”って毎回言われるから今日はなんて言い訳しようかなって呑気に考えてたんだ
でも、今日は
”んふふ、ねぇ、テレビ見ないの?そんなに見られると恥ずかしいんだけど。俺の顔なにかついてる?違うよね。ねーえ、俺○○のこと好きなんだけど。同じ気持ちだったら手、握って?”
ひとつだけバレちゃったね
私があなたを愛していること
明日からは雨が降らなくても手を繋いで帰れたり…なんてね。
『ところにより雨』
3/24/2024, 2:50:43 PM