目が覚めた。
時計を確認すれば、夕方の日も落ち掛ける時刻で、寝る前まで感じなかった湿気を帯びる空気が、部屋を包んでいる。
レースカーテンの先の小窓まで歩く。
しとしと
特有の地面を叩く音と、土の匂い。
梅雨を忘れていたかのように晴れていた空模様は消え、蛙達の喜ぶような声が聞こえる。
小窓も閉め、部屋のクーラーを入れ直す。
冷たい風が顔に当たり、ふと目元の渇きに気付く。
どうやら、まただったらしい。
洗面所に向かいながら、思い出そうとする。
今日こそ思い出せるかも知れないと。
しかし、蛇口から出る水みたいに、一瞬過りそうな光景も、脳から流れていくみたいにどこかに落ちていく。
やはり、今日も駄目だった。
あんなに大事にしていた筈なのに、君の顔が思い出せないのだ。
(お題 雨の香り、涙の跡)
(続きを書くかも知れないし、書かないかもしれない。久し振りなのにすみません)
6/20/2025, 8:52:27 AM