ささほ(小説の冒頭しか書けない病

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声が聞こえる

声が聞こえるのだと憔悴した顔で彼は言った。意味がありそうな命令が聞こえるのであれば精神科を受診したほうがよさそうだが、そういうのとは違うようだ。どんな声が?と尋ねると、悲鳴が聞こえる、それも一人ではなく何人もの悲鳴が重なって、遠い耳鳴りのようにも思えるけれど、夜も昼も聞こえて睡眠不足でまいっているのだ、と答えた。そうか、それは不運な話だ。単に病気であれば放置したんだが。地獄の声を聞く能力者は放置できないんだよねえ。人類はまだあの声を知るべきではないんだ。私は手を挙げて天使たちに合図する。この男を眠らせなさい。世界に審判の角笛が鳴り響くその日まで。

9/22/2024, 10:21:30 AM