七風

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「それって、無色の世界ってこと?」
同級生が僕に問いかける
「えーとね、色が無いわけじゃなくて、なんて言うか…見え方が違う?らしい」
「らしい?」
同級生は僕が曖昧に濁した語尾に問いかけてきた
「うん、生まれた時からこれだからあんまよくわかんないんだけどね」
「そっかそっか、どんな感じに見えてるの?」
「うーん、形の見え方は変わらないんだけど、基本的には色の濃さが同じものは同じに見える」
「例えば?」
「例えば…信号機の赤と緑とかはほとんど同じかな」
まあ、実際自分は赤や緑の本来の色を見た事がないのではっきりと答えることは出来ないが、親や医者が言うにはそうらしい
「そーなんだ!じゃあ渡るの大変だね」
「まぁ、信号のポーズとかあと、上とか下とかで判別は着くよ」
「へー、信号がひとつの表示だけじゃなくってよかったね」
「そうだね、たしかに」
日常生活に溶け込みすぎてそんな考え方したこともなかった、と同級生の考えに感心する

何となく話が一段落した頃に、気になっていたことを聞いてみる
「君は?どんなふうに見えてるの?」
「えっ?わたし?」
聞かれると思ってなかったのか手に持っていた白杖がかすかに震えた
「うん」
少し考える振りをしてから彼女が答える
「うーんと、わたしはねー、ちっちゃい頃は見えてたんだけど、今はもうほとんど見えない!」
「そっか」
「うん、3歳の頃にはもうほとんど見えてなかったから、見えてた時の記憶、ほぼないんだけどね」
そう、自傷気味に彼女は笑った
「…じゃあ、おそろいだ」
「おそろい?」
「うん、見え方はそれぞれ違うけど、色が分からない同士、おそろい」
僕はさっきよりもトーンを上げてそう言った
彼女は僕の言葉の意味を把握したのか
「おそろい、か、いいね」
と微笑んだ
「でしょ?」


僕らの“シカイ”は無色でつまらないものかもしれない
でも、僕らの“セカイ”はカラフルで最高に楽しい




お題:『無色の世界』

4/19/2023, 9:52:44 AM