一尾(いっぽ)in 仮住まい

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→短編・イヴの夜

 パリ20区、ベルヴィル公園に近いアパルトマンの一室に、イヴ・ブラッスールは住んでいる。
 イヴの夜のルーティンは、スマートフォンの電源を落とし、窓際に置いているお気に入りのソファに腰掛けて、香りの良いティザンヌをのんびり飲みながら、ラジオに耳を傾け、趣味の編み物に勤しむことである。 
 ちょうど今、マフラーが編み終わった。大きな縄編をメインモチーフにしたマフラーは、恋人に贈るノエルのプレゼントである。エレーヌの瞳の色と同じモスグリーンだ。
 マフラーの素晴らしい出来に、イヴは満足して顎を指で掴んだ。伸びかけのヒゲがジョリジョリと手に当たる。この針山のような手触りがイヴは結構好きだ。
 ティザンヌの効果か。大きなあくびを誰に構うことなく放り出して、イヴはベットに向かった。

テーマ; イブの夜

12/24/2024, 3:52:15 PM