名無しの椛

Open App

《歩幅》
   
 幼少期は同じだった。 
 
 小学生の頃も。

 中学生もまだ話せる距離。手の届く距離。
 
 中学の卒業式、「またね」という言葉を最後にそれぞれ別の高校へ。「また」なんてないと、薄々わかっていた。

 歩幅が変わる。距離が遠退く。貴方は成長して、私はしないまま。

 高校生になると、もう私の声は届かなくなっていた。あなたが遠くに行きすぎて。それとも私が遅かっただけ?私がだめだったの?
 
 今頃になって気付いて急に涙腺が緩んだ。

 「私を置いていかないで」なんてそんな言葉、もう遅すぎる。またねじゃなくて「さようなら」と言っていれば少しは楽だった?

 もう届かないし聞こえない、そうと分かっても面と向かって言いたかった。

 「愛してる」

 お題: 距離
  



 

 

 




12/1/2024, 12:19:11 PM