木瓜(ぼけ)

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空に恋してはいけないなんて、
誰が言ったろうか。

空が好きだ。
真っ青に晴れ渡る快晴も、
ちょっとどんより灰色な曇天も。

一日だって同じじゃない。
いつまでたっても飽くる日は来やしない。

草臥れるほどに捲られた写真集。
大事に大事に補修して、
映る空へと思いを馳せて。

その色褪せたセピアの先に、
きっと美しい蒼が彩るのだろうと想像する。

黎明を背景に起床して、
黄昏と共に帰宅して、
宵闇に包まれて眠りにつく。

嗚呼、嗚呼。それはなんて素晴らしき日々哉。
願わくばどうかそれまで、
この想いが続きますように。赦されますように。

「畏み畏みも申す」

未だ見ること叶わぬ空への憧憬を胸に抱いて。
摩天楼の最上階に座す巫は、
暗闇に覆われた地下世界より
今日も空へと祈りを捧げるのだった。

7/7/2025, 9:54:37 AM