Yushiki

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「いいか。よく聞けお前ら!」

 メガホンを片手に高台に登ったその男は、高らかに叫ぶ。

「この戦いに勝つための手段なら何でもやれ、何でも利用しろ。仲間の命を守り、敵を倒すためならば、どんな汚いことをしても俺が許す」

 軍服を身に纏い、一糸乱れぬ整列を組んだ部下達に向かい、男はさらに声に力を込めた。

「世間が何と言おうが、上のお偉いさんがどう命令してこようが、俺はお前らの命が何より大事だ。規律なんてクソくらえ。戦場に出ないで吠えるだけの犬のことなど気にするな」

 男はそこでいったん言葉を切ると、すうっと息を吸い込んだ。

「お前らのすることは、俺が全て肯定してやる。外の人間がたとえそのやり方を間違いだと否定してきても、俺が全て信じてやる。だから──」


 ──絶対に全員生きて帰ってこい。


 男がそう告げた瞬間、あちこちから拳が天高く突き上げられ、力強い咆哮が迸った。



【たとえ間違いだったとしても】



 お前らが命を散らすことほど、間違いなことなんてないのだから。

4/23/2023, 7:44:52 AM