—星夜の約束事—
『星の谷』は、流れ星の終着点。
その星は、色とりどりの鮮やかな『星のかけら』となって眠っていて、それを手にした者は、幸運を引き寄せる。
と、おばあちゃんが言っていた。
「あんなおとぎ話信じるのかよ」「星が落ちてくるわけないだろ」「そんなのがあったら、どこかで売られているだろうな」
誰もこの話を信じてくれない。
星がくっきりと浮かぶ夜。
だから僕は一人で『星の谷』に向かった。
「絶対にみつけてやる……!」
僕はスコップで地面を掘りながら呟いた。
されど『星のかけら』は出てこない。
「どこにあるんだろう……」
僕は、少しだけ涙目になっていた。
おばあちゃんが言っていたことだ。絶対どこかに隠れているはずだ。
「ねぇ、星のかけらを探しにきたの?」
僕と同じくらいの背丈の女の子が話しかけてきた。ここら辺じゃ小学校は一つしかないけれど、みたこともない顔だった。
「うん。でも、なかなかみつからないんだ」
「あたしも一緒に探していい?」
「もちろん。みつけたら教えてね」
僕たちは二手に分かれて探した。もっとも、声が届くくらいの距離だったけれど。
「君の名前は?」と僕は訊いた。
「あたしはルミナ。あなたは?」
「僕は、けんぞう」
彼女とは色々なことを話した。
彼女はこの場所について詳しくて、星のことならなんでも知っていた。
「みつけた!」ふいにルミナが叫んだ。
「本当⁈」
ルミナのスコップの上には、光り輝く小さな『星のかけら』が三つあった。
「きれい……」
「これ、全部あげる」彼女が言った。
「どうして? ルミナがみつけた『星のかけら』だよ?」
彼女は首を横に振る。そして僕が持っていたジャム瓶に押し込んだ。
「あたしはいいの。その代わり、今日、あたしと会ったことは誰にも言わないでほしい」
「うん……」
「あと、またここにきてほしいな」
「本当にいいの?」
「うん。でも、絶対に約束は守ってね」
かなり時間がかかってしまったので、僕たちは解散することにした。ルミナは僕と反対方向の道だった。
『星のかけら』が溢れないようにジャム瓶を手で抑える。
みんなにこのことを自慢するよりも、次に彼女と会える夜のことで頭がいっぱいだった。
「また会いたいな」
僕は小走りで家まで向かった。
お題:星が溢れる
3/16/2026, 12:36:50 AM